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新宿「どん底」

 真夏まえの新宿の繁華街を訪れた。梅雨前の生緩い湿気の少ない風が漂う中,オープンが酒場が続き,少し賑やかさを抜けたところに「どん底」というその昔,有名なお店はあった。入口にメニューと有名な作家の写真が??どうも三島由紀夫が通ったお店のよう。入口から数段階段を上った奥まった客席のさらに奥のテーブルについた。天井は低く妙な圧迫感がある,穴蔵のような印象です。
そこで「どん底」について,三島由紀夫先生の紹介文章を
 「ロシア料理のお店。クノッフ出版社のストラウス編集長夫妻が、新宿へ遊びに行きたいというので、案内して、まず若い人の大ぜい集まるロシヤ風の酒場‘どん底’へゆき、焼鳥キャバレー二軒をまわったところ、夫婦は大よろこびであった。酒場‘どん底’では、どん底歌集というものを売っていて、ある歌を一人が歌い出すと、期せずして若人の大合唱となる。喚声と音楽が一しょになって、なまなましいエネルギーが、一種のハーモニィを作り上げる。何んとも言えぬハリ切った健康な享楽場である。夫婦はしきりにこれをアメリカの酒場との比較して、日本人の享楽がかくも友好的で、なごやかで、けんかっぽくないのにおどろいていたが、私も、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジの酒場の暗い絶望的なふんいきを思いうかべた。
 しかしワビだのサビだのといっていた日本人が、集団的な享楽の仕方を学び、とにもかくにも一夕の歓楽の渦巻を作りうるようになったのは、戦後の現象で銀座の恒久バアーでコソコソ個人的享楽にふけっている連中にくらべると、焼鳥キャバレーやどん底酒場のほうが、よほで世界的水準に近づいているように、私には思われるのであった」
ボルシチをいただきながら,ウォッカをあおり,何とも古めかしくて,でも流行っているお店で気持ちよく飲みながら,楽しい新宿の夜は更けていくのでした。こんなお店無くなりましたね。
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